戻ってくることのない青春のあの日
はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」
素敵なお題があったので、せっかくなので書きたい思います。
これは私は高校1年生の頃の記憶。
(※記事の中に自転車の2人乗り、の話があります。もう10年前の話なので書きますが、自転車の2人乗りは違反です)
私の志望校は、制服の可愛い、家からかなり離れた、鶴見にある高校だった。
校則が緩めで、女の子が多くて、単位制の高校。
あまり頭が良くなかった私でも、なんとか合格することができて、ドキドキの高校生活がはじまった。
当時はモバゲーが流行っていて、入学前には、
「○○高校に入学します」ってプロフィールに書いてある人と繋がり、入学前から友達を作っていた。
その中にいたのがUという男の子だった。
入学式、クラス発表、私の中学からこの高校に入った子は2人しかなくて、同じクラスに知ってる顔はいなかった。
モバゲーでは写真のやり取りも、本名のやりとりもしてなかったので、モバゲー内でできた友達が同じクラスにいるのかもわからなかった。
私はモバゲー内では「チェリー」という名前だったんだけど(めちゃくちゃ恥ずかしいな。)
入学して1ヶ月経たないくらいから、他のクラスから私を見にくる人達が
あれ、チェリーじゃない?と噂していた。
(私のモバゲーのプロフィールで髪が長いことを特徴として書いてあった。当時、私の髪はお尻まで伸びていて、それをツインテールにしていた)
いつの間にか、チェリーというあだ名から、セーラーというあだ名になった私は
(セーラームーンからきていたらしい。全く知らない人からも呼ばれてすごい恥ずかしかったのを覚えてる)
気の合う友達と普通の高校生活を送っていた。
私の通っていた高校は圧倒的に女子が多くて、男子は少なかったが、1人気になる男の子がいた。
顔がカッコいいとかじゃなくて、面白くて、破天荒で、なんかほっとけなくて、背の小さい男の子。
いじられ役?というわけではないけど、その男の子の周りにはいつも人がいた。
ある日、通学のため電車に乗ると、その男の子が先に乗っていた。
それがきっかけで話すようになり、その男の子のが、モバゲーで知り合っていたUだと知った。
向こうは私のことを先にチェリーと認識していたが…(笑)
同じ電車に乗っていて、しかも私よりも前の駅から乗っていたUは、家も同じ区内にあって、駅も2つしか変わらず、近い方だった。(鶴見の学校なので、鶴見や川崎から通っている子が多かった)
帰りも同じ電車だし、それがきっかけでUと話すようになり、ある日から私たちは付き合うようになった。
Uが私に気があることは気づいていた。というか、周りにいる男子達が、私が通るたびに、
セーラー来たよ!いけよ!ってUを突っついていたので…(笑)私もUのことが気になっていたので、毎回ドキドキしていた。
付き合うようになってからはみんなの公認の仲だった。
Uは破天荒でほっとけない、なんだか母性本能がくすぐられるような男の子で、ほかの女子からも人気があったので、私はそれも含めてドキドキしていた。だって女の子が多い学校ですもの…可愛い子なんてたくさん居ましたから。
そして、私の記憶にいつまでも思い出として残っている、あの日、がきた。
「次は体育だぞ〜」の声に、みんながバタバタと支度し始めた時にどさくさに紛れてUが、
「体育だるくね?ちょっと遊び行こうぜ」
と言った。
私はサボるの?!え、大丈夫なの?!
とめちゃくちゃ焦ったが、みんなが移動している間にこっそり抜けた。
単位制の学校なので、2、3年生は1限目がない人もいて、逆に、1限目で終わる上級生もいたので、学校の門は常に開いていた。
私たちは簡単に、学校から抜け出すことができた。
Uは駅から自転車登校をしていたので、自転車を乗ってきて、「後ろに乗って」
と荷台をポンと叩いた。
私はそういうことに慣れてなくて、いきなりびっくりするようなことを言うUにどんどん惹かれて、ドキドキしながら2人乗りをした。
最初は、「うわ、漕ぎづら!」「めっちゃ揺れてごめん」とか言いながらも、そのうち普通に進めるようになった。
私が初めて2人乗りをしたのと同時に、Uも2人乗りは初めてだったのだ。
「ねえ、どこいくの?」
「とりあえず、あっち!」
「え!どこ行くか決めてないの!笑」
「勢いで決めたからなにも考えてない!笑」
「じゃあこのまま、川崎まで行けるか、行ってみよう」
2人で初めての2人乗り、初めての道、
すべてが初めての体験で、ワクワクしっぱなしだった。
もちろん、学校から自転様で川崎まで行ったことなんかなくて、道も知らないで、ただひたすらに、川崎方面だろう、と思った道を進んだ。
途中、田んぼみたいな光景に出会ったり、電車の下のトンネルを潜ったり、
本当にこのまま進めばたどり着くのか、不安もあったが、冒険気分で不安よりもワクワクが大きかった。
Uは知らない人にも平気で声をかけられる性格で、本当に迷った時に前から歩いてきたおじいちゃんに
「あの、川崎に行きたいんですけど、どっちですか?」って聞いてくれた。
教えてもらった方向へ進むと、大きな道路にでた。
「「あ!!!川崎じゃん!!!」」
2人して叫んだ。そして本当に着いた!!と大笑いしながら喜んだ。本当に自転車でこられた。知らない道を、2人で。
記念にプリクラ撮ろ!!って、2人でダイスってゲーセンに入ってプリクラを撮った。
その時のプリクラはもう捨ててしまったけど、
プリクラの中にうんていみたいなのがついてて、ぶら下がって撮れる面白いやつだった。
Uは猿みたいに両手両足でうんていみたいなのにつかまってぶら下がって撮った。
落書きには、
学校さぼった!!
って汚い字で書いた。
もう川崎に着くだけでかなりの時間を使ってしまったので、プリクラを撮ったらまたすぐに自転車で戻ることに。
「今度はこの大通りを進めば、鶴見に戻れそうだね」
と、2人でキャッキャしながら自転車を走らせた。
しかし、上手くはいかなかった。
行きとは違う道を進んだため、知らない景色が続く。
だんだん焦ってきた私たち。
「ここ、どこだろう…」
車通りの多い道だったため、通行人もおらず、ひたすら進むしかなかった。
完全に、迷子。
と、思った瞬間、私たちは2人同時に叫んだ
「「自由の女神だ!!!!!」」
それが、これ
画像はグーグルアースから撮ってきました。
この自由の女神は、私たちが降りている鶴見市場駅から学校に行くまでの道にあった、ホテルの上に立っている像だった。
知っている光景が広がり、私たちは大興奮。
もう迷わない、大丈夫だ。と安心の気持ちと、冒険気分のドキドキが一緒にまざってすごく楽しかったのを、今でも鮮明に覚えている。
学校まで帰ると、もうお昼の時間だった。
お昼はいつも別々に食べていた(それぞれの中のいい友達と食べてた)が、
その日はずっと、楽しかったドキドキで胸がいっぱいだった。けれど、友達には秘密にしていた。2人だけの秘密の思い出にしたかったから。
好きな人と、自転車の2人乗りで、知らない道を冒険する。
そんな青春、もう戻ってはこない。
だからこそ、ずっと心に残っている大切な思い出。
今でも家族で川崎に出かけるとあの日のことを思い出す。
私たちは1年ほど付き合ったが、高校2年の時に、Uから別れを告げられ、別れることになった。別れた後、フリーになったUの周りにはつねに女の子たちがいて、苦しかったのを覚えている。
しばらくして私は彼氏ができ、妊娠して、高校は中退してしまい、Uと会うことはなくなった。
何年かして、Facebookで繋がることができたが、現在のUには可愛い彼女がいる。
投稿からも、当時と変わらぬ、破天荒で面白くて、ほっとけないあの頃のUの姿が思い浮かぶ。
私にも夫がいるし、もう会うことはないと思うけど、
あの時全力で好きだった人と過ごした、短い高校生活、
あの日の出来事、すべてが私の思い出です。
もっともっと歳を取って、おばあちゃんになった私と、おじいちゃんになったUとお互いに、あの頃こんな冒険したよね、って話せる日がきたらいいな、なんて思いながら。
おしまい。
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